FINAL FANTASYY−友の翼
今、世界は混沌と絶望の中にあった、魔法を司る『三闘神』は全てケフカにより奪われ、世界を崩壊に導いていた。
人々が恐怖と畏怖の念を込めていわれている『裁きの光』。
それは、ケフカが居ると思われる瓦礫の山が連なった塔から発せられる破壊の閃光を意味していた。
世界が裂かれたあの日当時はそんなに頻繁ではなかったが、この頃となってはその間隔も短く、
ケフカが三闘神の力を我が者にしつつある証拠でもあった。
ケフカ打倒を決心し、瓦礫の塔に向かう勇敢な者も現れたが『裁きの光』が止まないことはケフカ健在を示し、
帰ってきた者が現れないのはその者の死を示していた。
しかし、人々は知らない。
密かにガストラ皇帝に立ち向かい、魔大陸で世界平和のために戦った戦士達を・・・。
だが、そのものたちの好戦も虚しく、世界は崩壊し、戦士達も飛空艇もろとも消え去った。
しかし、そのうちの一人が生き延びていたのだった。
かつて常勝将軍という異名を持った女将軍。
その名はセリス。
セリスはある孤島に流れ着き、またそこに棲んでいたシドの必死の看護により回復。
以後、世界で生きているであろう散り散りとなった仲間達を集めつつ、打倒ケフカを胸にずっとひめていた。
セリスの願いは天空の神に通じたのか、世界を巡ることにかつての仲間達を再会を果たすことが出来た。
王位継承権を捨て、格闘家になったマッシュ。
若きフィガロ城主、エドガー。
そして、今再び再会した賭博と空に人生を掛けたセッツアー。
再会を果たした一行は新たな翼を求めここ『ダリルの墓』に来ていた。
一刻を争う今の世界において、空を駆けめぐる翼は不可欠のものになっているのだ。
悠々と船旅をする時間など彼等にはない。
そして『ダリルの墓』はまだこの世に未練がある亡者どもや、生者を妬み、
冥界に引きずり込もうとするアンデッド達がひしめく極めて危険な場所だが、これまでの過酷な戦闘を切り抜いた彼らにとっては、
特別視するほど危険地帯ではなかった。
そして、一行はここに格納されていた飛空艇の甲板に立っていた。「・・・・というわけだ。」
セッツアーがこのファルコン号にまつわる過去を全て話し終えた。
ダリルとはこの飛空艇の元の持ち主であり、昔のセッツアーの相棒だったこと、
そして飛空艇共々ダリルは亡くなり、ここに埋葬すると共に元通りに修理したファルコン号も眠らせたことなどをだ。
話し終えたセッツアーは甲板近くの手すりに腰掛け、懐にある葉巻を取り出し、歯で先を食いちぎりそして火をつけた。
「珍しいな、セッツアーが煙草を吸うなんてな。」
エドガーがセッツアーの過去に少なからず驚きを覚えながらいう。
「まあな、こんな話なんて普通だったらしない。本当ならば酒を煽りながら話したいところだが、あいにく持ち合わせなくてな。」
セッツアーが慣れないきつい煙草を吸いながら言う。
「それで、煙草をか・・・。」
エドガーが納得しながら言った。
エドガーの返答に「そんなところだ」とセッツアーは短く返す。
「さて、メンテナンスは欠かさずやっていたが、一応点検いないとな。」
手すりから腰を上げて、セッツアーが言う。
「私も機会については少々詳しい。手伝おう。」
エドガーがセッツアーに点検の手伝いを申し出る。
「私も何か手伝いたいけど・・・。」
「俺にできることあるか?」
エドガーに続き、セリス、マッシュも聞く。
「エドガーは充分手助けになるが素人の申し出はお断りだ。できる仕事もできない。」
エドガー以外の申し出をセッツアーは冷たくあしらった。
しかし、実際セッツアーの言うことは間違いではない。
機械についてまったく知識のない者が手助けになるとは到底考えられない、
ましてや触ってはならない所に触れ機械を破壊してはまさしく眼を当てられない。
そして最悪、命を落としかねない故にセッツアーは言っているのだ。「分かったわ。」
セッツアーの性格は知っているが、実際言われると腹立たしい。
セリスは怒りを込めた口調で言った。
マッシュはそんなセリスに苦笑いをしながらもセッツアーの言葉に従う意図を伝えた。
「では、エンジンルームに案内してくれ。」
エドガーが話を変えるかのようにセッツアーに案内を促す。
「ああ、こっちだ。」
セッツアーはセリスの態度に何も反応を見せずに案内しようとする。
「ちょっと、見るだけならいいでしょ!」
セリスが立ち去ろうとするセッツアー達に慌てて言う。
「勝手にしろ。」
またしても素っ気なくセッツアーが言う。
腹立てるのもいい加減に疲れたセリスは皮肉を込めて「有り難う。」
と言った。
勿論、返答はない。
昔、オペラ歌手マリアと間違えられた時などセッツアーは優しく接してくれたが、いざ別人だと分かると、
うって変わって接し方が変わったことがあった。
あれからかなりの年月が経っているが変貌したところはない。
マリアと自分は何処が違うのだろうか?
正体を明かさないまで、知らなかった方が間抜けだとセリス自身は思う。
もしかしたらこのことがあったが故にこうした接し方を取っているのだろうか・・・・。
無論、そのことはセッツアー自身しか知らないことである。
そうこう考えているうちにエンジンルームにたどり着いていた。
オイルの臭いが鼻をつく。
「俺はこっちをやろう。エドガーはそっちを頼む。」
セッツアーが点検箇所を分担し、言う。
「分かった。」
エドガーがその場にあるオイルまみれの革手袋をはめながら言う。「さて、取りかかるか・・・。」
セッツアー達が作業を始めた。

作業開始から約一時間。流石に暇になってきたセリスが唐突にセッツアーに質問を投げかけた。
「ダリルさん、あなたの恋人なの?」
セリスの質問に一瞬手を止めたが、再び作業しながら「いや、ただの相棒だ。」と返答した。
「本当か?」
やや、冗談を交えた口調でエドガーが再び聞く。
エドガーにとってこの手の話には目がない。
「ふっ、本当だ。」
軽い含み笑いを込めながら言う。
「そんなに信じられないのなら、少し過去を語ってやろうか・・・。」
「聞かせてもらいたいわ、ダリルさんとの出会い。」
セリスはクスクス笑いながら促す。
「ああ、ダリルとの出会いも話すが、実は他にも聞いて貰いたい話がある・・・。」
そして、セッツアーは語り始めた。

ここは七年前の帝国の本拠地ベクタ。
まだ戦争当時のここはまさしく無法地帯と化していた。
若い者は帝国兵をして抜擢され、力無き者は帝国に人生全てを奪われた。
また、路上に死体が転げているのは別に珍しいことではなく、盗難・殺人がない日はない。
故に一般の者は年寄り、小さな子供、女、そして兵に使えない男共のみ。
老人はただもう少し来るであろう、人生の終焉を待ち望み、小さな子供は何も知らず生き、
女は娼婦紛いのことをしながら生き延び、力無き男共は震えながら、生きた。
ただ、幸せに事ない人生を送れるのは一部の貴族・富豪だけだった。
ある程度の税を納めれば、帝国はその者を優遇したのだ。
その富豪共が豪遊として、盛んに楽しませたのが「カジノ」。
「ブラッドオブベクタ」と呼ばれるカジノはここベクタでは一番の人気を博していた。
実際ここでは他国の国家財産ほどの金が動いたときもある。
そして、セッツアーもまたここの常連でもあった。
「フル・ハウス」
今もポーカーで賭けをしていた。
ここでは、セッツアーを知らぬ者は存在せず、「さすらいのギャンブラー」として知れ渡っていた。
「くっ!」
対峙していた一人の富豪が荒々しくカードを叩きつける。
カードは「ツー・ペア」
「俺の勝ちだ、50万ギル確かに受け取った。」
すでにセッツアーは100万ギルを稼いでいた。今日はこれまでだなと認識すると立ち上がろうとする。
「あなたがさすらいのギャンブラー?」
すると突然、自分と同じ年頃の女性が話しかけてきた。
胸元が大きく空いた紫色のドレスを纏い、美しい腰まで伸びた金髪が印象的だった。
「ああ、そう言われている。あんたは?」
セッツアーはここで初めてみる女性に怪しさを感じながら聞く。
「私はダリル。実家はここベクタで武器商人を営んでるの。」
ダリルと言った女性は軽く自身を紹介した。
「ほう、そんなお嬢さんがここに何しに来た。」
セッツアーが軽い疑問を投げかける。
「カジノで、何しに来たはないでしょ。わたしも遊びに来たの。」
「フッ、ではこういう場所ではなく、あそこにあるスロットで遊んでいろ。」
ダリルの返答にセッツアーは軽くあしらう。
「冗談ではないわ!あんな一人で遊ぶゲームなんてまっぴら!!人との賭けでスリルを味わいたいのよ!!」
セッツアーの言葉に腹を立てたダリルは強く抗議する。
「珍しいな・・・。俺と同じ考えを持つ奴がいるとはな・・。」
セッツアーはダリルの言葉に多少の評価をする。
「では、俺と勝負するか?」
セッツアーは久々にたぎる血が実感できた。
何故だろうか?相手は素人・・・。だが不思議にことに面白い。
「楽しませてくれ、お嬢さん!」
そう言うとディラーに目配せをして、カードを配るように促す。
「勝たせて貰うわ!」
(言ってくれる・・・。)
セッツアーは心の中で言った。
「さて、何を賭けるんだ?」
セッツアーは賭けの対象を聞く。
「そうね、貴方が以前手に入れた『飛空艇創造技術法』という本欲しいわ。
それと、貴方が今手がけている飛空艇も見せて。あと、飛空艇私も作ってみたいから、完成まで教えてね。」
つらつらと金髪の少女は所望する物を言う。
「やれやれ、3つも賭ける物を出されると、こっちもそれに併せて3つ所望できるのだ。ルール分かってるのか?」
セッツアーはあまりの素人ぶりに溜息をつきながら言う。
それを指摘されたダリルは赤面しながらも「知ってたわ!」と反論する。
「いいだろう。では、俺は一口50万しか賭けられないから併せて100万ギルとお前自身だ。」
セッツアーは不敵な笑みを浮かべながら言う。
これで賭けから降りるであろう。
途中での降板は相手に10万払わなければならないが、この娘にしてみれば大した金額ではないだろう。
しかし。
「いいわ。」
娘は強い決意を込めながら言った。
その目に敗北はないという絶対的な自身に満ちあふれていた。
「いいだろう、勝負してやる。」
相手の行動に驚きはしたが、勝負を申し込まれた以上容赦はしないつもりだ。
この娘を手に入れたら、自分の世話をする侍女を務めてもらおう。
セッツアーはそう考えつつ、カードを手にした。
手持ちのカードはスペードのエース以外がそろっていた。
おそらく、4カードは間違いないと確信する。それと同時にセッツアーは自分の勝利を信じて疑わなかった。
「ドロー。」
セッツアーはディラーから2枚のカードを受け取る。
予想通りスペードのエースが手元に来た。
対してダリルは1枚だけ変える。
「いいな?」
セッツアーはそう言うとカードを開け出す。
しかし、ダリルはそのカードに一瞬だけ驚きの表情を見せるがすぐに微笑を浮かべた。
まさか!
セッツアーの心の中で警告の鐘が響き渡る。
「悪いわね。」
娘の出したカードは
ハートの10、J、Q、Kそして・・・・。
ジョーカー。
完敗だった。いままで、多少の敗退はあったものの素人にここまで叩き伏せられたのはこれまでない屈辱である。
「いいだろう。アンタの勝ちだ、所望してた『飛空艇創造技術法』をくれてやる。そして、俺の住所はここだ。
ここに来れば飛空艇も見せるし、知っていること全て教えてやる。」
セッツアーは潔く負けを認め、賭けた物を支払うことを約束した。



「なるほどね・・。初めて屈辱を味わされたのがダリルさんだと。」
セッツアーがある程度話し終えた時セリスが感想を述べる。
「しかし、恋人ではない証明にはならんぞ。」
エドガーが強く言う。
「まあまあ、兄貴。ここからだろ、多分。」
マッシュが兄をなだめながら言う。
「それもそうかもしれないが、では飛空艇技術の本など何処で?」
エドガーはもう一つ質問する。
「ああ、あれは変だったな。俺がブラックジャックをしている時、怪しげなローブを纏った爺さんが賭けてきた。」
「しかも、わざを負けやがった。まるで、俺にこれを手渡すようだったな・・・。」
セッツアーが過去の記憶を辿りながら言う。そして、ブラックジャック号の名前の由来もここから来たことも付け加える。
「悪い、その爺さんの名前聞いたか?」
エドガーがせまりつつ聞く。
「確か・・。サーマス=ハイウインドだったか・・。」
エドガーがその名前を聞いて驚いた。そして、「やはりか・・。」と自分で納得していた。
セリスはエドガーの行動が気になり、頷いた理由を聞く。
「実は、飛空艇の第一人者がいつの間にか行方知らずになってね。
どうやら飛空艇開発に資金が尽きてしまい、絶望に駆られ放浪の旅に出たとか・・・。」
エドガーが頷いた理由について説明をする。
「なるほど、それで合点がつく。」
セッツアーも納得した。
「分かったから、続きを・・。」
セリスがそろそろ話を進めて欲しい表情で言う。
「分かった。」
セッツアーはまた語り始める。


それから、三年後
毎日のようにセッツアーの家に通い続けたダリルは遂に親から外出禁止が言われた。
勿論、ダリルは従うはずがない。
ダリルは親の言葉をを無視し、セッツアーの家に通い続けた。
「このエンジンはだな・・・。」
今日もいつものようにセッツアーはダリルに飛空艇技術を熱心に教えていた。
「それで、ここに推進力が生まれる訳ね・・・。」
「ああ、だから・・・。」
ダリルもセッツアーに負けないほど空に強い願望があり、飛空艇技術もセッツアーに引けを取らなくなっていた。
このような討論はほぼ一日中続き、そして夜にはカジノに足を運ぶ。
ダリルにとってこれが日課となっていた。
しかし、その夜は違っていた。
いつものようにカジノで勝ち続けていたのだが、ブラックジャックをやっている時、ある珍しい対戦者がでたのだ。
その対戦者の名前は『ケフカ=パラッツオ』。
いまでは優秀な軍師としてガストラの右腕として活躍し、つい最近では『魔導』の研究をしていると聞く。
しかも、その隣にエメラルドの髪を後ろにまとめた少女がいた。
齢は10代前半といったところか・・。
「これはケフカ軍師殿。この様なところでお会いするとは奇遇ですね。」
セッツアーは恭しく言った。
「ふん、挨拶などいい。私は忙しいながらこの様な下賤者が集まる場所に来た。何故だか分かるか?」
ケフカはいきなり不機嫌を露わにしながらいう。
「そこの娘を頂戴するために私が来たのだよ!」
「なんですって!」
ケフカの言葉にダリルは驚き、そして同時に怒りの表情を浮かべいう。
「まったく、娘を取り返さないと武器の供給が取れないんでね、君の父親には頭にくる、
ガストラ皇帝様の右腕と称される私が皇帝様以外に使われるなど!」
激昂しながらケフカはセッツアーを睨む。
「あの武器商人を殺してもいいのだが、一時の武器供給などたかがしれている。
やはり、これから奴に動いてもらわないと武器の供給が苦しくなり、いずれは資金などに強く響く。」
「なるほど、ここはおとなしく従った方が帝国にしては賢い選択なわけだ。」
セッツアーは先程の態度とはうって代わり挑発的な発言をする。
「貴様。ただではおかんぞ・・・。」
ケフカは殺気を込めていう。
「悪いな。では、賭けをしよう。軍師殿は何を賭けんだ?」
セッツアーは皮肉を込めながらいう。
「ふん、では私はこの『ティナ』を賭けの対象としよう。」
ケフカは怪しい笑みを浮かべながらいう。
「だとすると、俺はダリルを賭けないといけないか・・。」
ダリルにセッツアーは目配せをする。
ダリルはセッツアーに一つ頷いてみせる。
賭けは成立した。
「よし、いいだろう。俺はダリルを賭ける。」
セッツアーはふっきれたかのようにいう。
「では、始めるとしよう・・。」
ケフカは依然と怪しい笑みを浮かべながら言った。
ディラーがカードを配る。
勿論、セッツアーはイカサマが無いように目を見張る。ダリルも同様だった。
相手の手札は「スペードの3」と伏せ札。
自分は「ハートの10」と「クローバの9」。
状況としてはもし伏せ札が10以上、エースでも自分は勝てる。
自分は相手が何度もドローしても変えないつもりだ。
ギャンブラーにとって、勝負と無謀はまったく異なる。今ここで、ドローするのは間違いなく無謀。いつかは破滅を導く型だ。
真のギャンブラーとは引くところは絶対引かなければならない、勿論勝負所を見分けるのは玄人のなせる技だが。
だが、ケフカはドローする気配は一向にない。
ただニヤニヤと怪しい笑みを浮かべているだけ。
「どうした?変えないのか?」
ケフカにセッツアーが言うと、考えられない言葉が返ってきた。
「いや、わたしは結構。君が引き給え。」
セッツアーは耳を疑った。
自分がオープンしているのはハートの10。
そして、考える限り相手の手札の最高は14・・・。
普通だったら、ドローするはずなのだが。
「ならば・・。」
そう言い賭けた途端。
「ティナ君。やり給え。」
ケフカは隣の少女に何かを強要した。
その少女はケフカの命に従い、何かを詠唱し始めた。
「なんだ、軍師殿。何かのおまじないか?」
鼻で一笑してセッツアーはケフカの行動を一瞥した。
「そんな感じだ。」
ケフカはセッツアーの言葉に怒りを見せず、ただ微笑していた。
「我、この者の思考奪ったり。我が友となれ、全ては我が命ずるままに・・・。」
娘が何か理解できない言葉を詠唱し終わった後、セッツアーは突然めまいのような感覚を覚え、
気がついたら目の前の現実に愕然とした。
何故か自分の目の前にカードが3枚あった。
しかもそのカードはクローバのK。
セッツアーの負けである。
何が起きたか分からない、何故カードが湧いてでてきたのか?
セッツアーは混乱を極めた。
ダリルも隣で悲しそうな表情を見せる。
「・・・ッツアー君。セッツアー君!」
再びケフカの激により、セッツアーは現実世界に呼び戻された。
「な、なんだ。」
「なんだではない!さっさとオープンし給え!!」
激しく怒りながらケフカは言った。これ以上の茶番に付き合いきれないかのように。
「分かった・・・。」
悔しさを胸にゆっくりとカードをオープンした。
「よし!私の勝ちだ。この娘は頂く、以後この娘は私に所有権がある。二度と近づかないようにな!」
そうケフカが言うと荒々しくダリルの手を引っ張り、カジノを出た。
セッツアーはただ、何も言えずそこにしばらくたたずんでいた。


「オイ!それじゃやっぱり恋人だろうが!!!」
エドガーが聞き終えた後、怒りを覚えながら言う。
「そうよね、間違いなく。」
セリスも賛同する。
「その話を聞いて恋人ではないと納得する方がおかしいだろ。」
マッシュも呆れて言う。
「馬鹿な、カジノに一緒にいただけ、一緒に飛空艇を手掛けただけだぞ。それ以上何もない。」
セッツアーは皆の反応に狼狽しながら言う。
「分かった、分かった・・。しかし、ティナと過去にあっていたとはな。」
エドガーが感情露わにしたセッツアーを落ち着かせ言う。
「そうね、私も驚きだわ。そして、ティナはその頃から既に帝国に利用されていたのね。」
セリスがティナを哀れむように言う。
「セリスは知らなかったのか?」
エドガーが聞く。
「私が将軍となって軍部に関するようになったのは5年前。その前からベクタにいたけど、そう言う裏工作には兵士は無関与よ。」
「しかもティナの存在を知ったのは将軍になって2年ぐらいした時よ。その時耳に入った言葉は『魔導の力を持った少女』だけだけど。」
セリスは何もできなかった自分に不甲斐なさを覚えつつ言った。
「だが、その時ティナがお前に向けて放ったのは魔法だな。」
マッシュは暗い表情を浮かべ言う。
「ああ、今だから確信して言える。間違いない。そしてうる覚えだがルーンの語感からして放った魔法はおそらく『コンフュ』。」
セッツアーは過去の出来事を鮮明に蘇るのを実感しつつ言った。
「思考分断魔法・・・。間違いないでしょうね・・。」
セリスが答える。
その後、しばらく沈黙が辺りを支配する。

「それで、その後どうなったんだ。」
エドガーが再びなりゆきを聞く。
「後、お前達に話さん。」
セッツアーはエドガーの問いに答えず、作業の手を止めた。
「終わったぞ。そっちはいいのか?」
セッツアーは点検の進み具合をエドガーに聞く。
「ああ、終わっている。いつでも出発可能だ。」
エドガーの作業終了をセッツアーは聞くと、皆に甲板に出るように言う。
ファルコンを大地に繋いでいる戒めを解き放つために。
「よーし、いいぞ!」
マッシュが最後の楔を力任せに抜き取り言う。
「よし!いくぞ!!」
セッツアーが舵を握りしめ言った。
それと同時に格納庫の扉をエドガーが開く。
眩い光と共に赤く染まった空が見え始める。これから、このファルコンが飛び回る空だ。
「いくぜ、相棒!!今度は世界平和を賭けた大勝負だ!!」
セッツアーは久々に沸き上がる、賭けのスリルに歓喜した。
セッツアーの操作と共にファルコンが力強く浮上し始める。
そして、空に舞い上がり崩壊しかけた世界の全貌が露わとなる。
「こう見ると、酷いものだ・・・。」
「私たちはこの世界を救わなければならない・・・。」
エドガーとセリスがそれぞれ言う。

「今度の賭けは絶対負けん!ダリルよ!この命そっくりチップに変えてお前に賭けるぜ!!」
そういって、セッツアーは一つのコインを指ではじいた。
コインはゆっくりを弧を描きながら海に向かって落ちていった。
あたかもそれはダリルに手向けた華代わりのように・・・。

(・・・・ふっ、言えないな。あの後、俺とダリルはここコーリンゲンまで逃げてきたなんぞ・・。
しかも、この傷はダリルを探しに来た追っ手からかばった傷なんて・・・絶対にな。)
自嘲しつつ、セッツアーは力強く舵を握りしめた。
それと共にファルコンは更に速度を増し、赤く染め上がった空を力強く飛翔した。

その後、さすらいのギャンブラーは賭けに勝利する。
世界平和というこの上ない配当金を手にし、セッツアーはまさしく伝説のギャンブラーとなった。
空を駆ける伝説のギャンブラー、セッツアー。
彼の人生こそが賭であり、賭けたからこそ世界を守ったのだ。